烏は主を選ばない<★★★★★>

烏は主を選ばない

烏は主を選ばない

「烏に単は似合わない」を雪哉という若宮の近習に無理やりされてしまった少年の視点から描いた物語。こっちの方が個人的には好き、とても面白かったです。これを読むと若宮も姫たちを傷つけないように、無理な期待を持たせないようにときちんと考えて足を運ばなかったんだなと。
雪哉が良いキャラしてますね。3人兄弟で実は雪哉だけが前妻の子であり、兄や弟とは血が繋がってない。本当はとても優秀な子なのに、兄をたてる為にわざとボンクラなふりをしている。そういう子だからこそ故郷を出て宮中で力を発揮していく姿は読んでて気持ちが良かったです。雪哉頭良すぎ。若宮との遠慮のない会話も面白かったです。
最後の雪哉の決断は残念。実は雪哉を産んだ女性は北家当主の娘であり、雪哉は正式な北家当主の孫になる。そんな血に苦しめられていた雪哉は、てっきり若宮は自分を垂氷の雪哉として扱ってくれていると思っていた。そんな若宮を慕うようになってきたのに、実は北家当主の孫である自分を使って北家を味方にしようとしていた事実を知って怒る雪哉。路近の言う通り若宮が主である以上利用できるものは利用しても仕方ない、でも幼い雪哉にはその考えが受け入れられなくて…。「僕の知らない所、僕の関係ない所で勝手に死んでください」が印象的。雪哉も本当は若宮が 大好きなのになぁ…。