タルト・タタンの夢<★★★★☆>

小さなフレンチレストラン、ビストロ・パ・マルで繰り広げられる料理にまつわる日常ミステリー。サクッと読めました。内容も面白かったし、何よりお腹がすく!パ・マルのようなお店で思いっきり食べてみたいです。
ガレット・デ・ロワの秘密」はロマンチックな話だなと。何年も一人の人を一途に思い続けるのは大変だと思うので、三舟さんの推理によってやっとすれ違いが終わるようで良かったです。最後の「割り切れないチョコレート」は良い話でした。なぜわざわざ割り切れない数のチョコレートを箱詰めにするのが、その理由にジーンときました。小さい頃はこういうことがちょくちょくあったな~と思います。きちんとお母さんと会って一緒の時間を過ごしてるといいけど。
個人的に好きなキャラクター金子さんかな。さっぱりしてて頼れるお姉さまって感じ。私はお酒が苦手なので苦手な人でも飲めるワインを金子さんにチョイスしてもらいたい。でも俳句のセンスは微妙ですね(笑)

星間商事株式会社 社史編纂室〈★★★☆☆〉

星間商事株式会社社史編纂室 (ちくま文庫)

星間商事株式会社社史編纂室 (ちくま文庫)

社史を作るために設立された社史編纂室という部署で働く幸代。個性豊なメンバーに囲まれて社史を作っていくうちに社のある秘密に気付いてしまい…。
主人公の幸代がBL同人誌を作るのが趣味でその小説がところどころで紹介されているのが面白い。オヤジ受けとか趣味が渋いな~。結婚して同人を辞めるといってた仲間も最終的に戻ってきたようで何より、そんなに簡単にやめられたら苦労はしないよ(笑)
上層部と対立しながらも星間商事が業績アップした裏の理由を物語にした裏社史が無事に完成したのは良かったけど、コミケで売って、会社の色々な場所に紛れ込ませた後はどうなったんだろう。反応が気になるんだが、その後のことがかかれてないのは残念。
「月魚」や「神去なぁなぁ日常」に比べると物足りないかも。でも三浦先生のBLは読んでみたい。「月魚」よりそれっぽいのかいてくれないかな。

天山の巫女ソニン1 黄金の燕〈★★★☆☆〉

正統派ファンタジーといった印象。何気なく著者プロフィールを見たら、「羽州ものがたり」とかいてあってそういえばこれ読んだな~と思い出しました。正直可もなく不可もなくだった。個人的には今回の作品の方が好きです。
天山では落ちこぼれだったけど、下界ではその知識や経験を生かして王子たちを助けていく逞しいソニンに好感がもてます。天山育ちなので少し世間知らずなところもあって、そこがまた可愛いです。ソニンの家族は皆温かくていいですね、夜逃げしてしまったそうですがどうか平和に暮らしてますように!
今のところソニンとイウォルは微笑ましい主従関係を築いているけど、恋愛も期待していいのかな?レンヒの最期はとてもレンヒらしいなと。ソニンには天山での力を生かして生きていってほしいです。

びっくり館の殺人<★★★☆☆>

びっくり館の殺人 (講談社文庫)

びっくり館の殺人 (講談社文庫)

館シリーズ8冊目。以前ミステリーランドという子供向けのレーベルから刊行されて、主人公が小学生なせいか良い意味では読みやすい。悪くいえばあっさりし過ぎてもの足りなかったです。
館シリーズではお馴染みの鹿谷は少ししか出てこなくて残念。物語の形式としては鹿谷がかいた「迷路館の殺人」を大学生の主人公が気になって買って、それがきっかけで小学生の時に体験した事件を思い出す、ということになってます。「迷路館の殺人」がかかれてから15年たっていると主人公がいってるので時間軸的にはかなり最近の設定ですね。鹿谷は大分年をとっているはず。
古屋敷龍平が歪みまくってて醜い。血は繋がってないとはいえ娘に手を出して妊娠させるとかえげつない…。俊生を守る為に主人公たちのとった行動が正しいかどうかは判断しづらいが、それが最後の再会シーンに繋がっていて少し不気味で何かが起こりそうで怖い。

武蔵野アンダー・ワールドセブン 多重迷宮<★★★☆☆>

南北で分断された日本を舞台に地下迷宮で起こる連続殺人事件。ミステリーと謳っているけど、実際にミステリー色は弱めでラノベっぽい。「消失グラデーション」が良すぎたというのもあるけど、個人的にそれを越えることは今回もなし。
全ては神子都を守る為、その為に事件の真実すら揉み消す藤間。惚れた弱味ってやつかな、クールそうに見えて実は熱い思いを胸に秘めている。そういうキャラは嫌いじゃないです。事件の真相に関してはそういうことだったんだなと納得。でも正直少しだけ裏切られた気分。多重人格者だったとは…。最初に出てくるメンバー表が切ない。いつか神子都が帰ってくるといいな。

革命のリべリオン 第Ⅰ部いつわりの世界

革命のリベリオン: 第I部 いつわりの世界 (新潮文庫)

革命のリベリオン: 第I部 いつわりの世界 (新潮文庫)

遺伝子のランクによって優劣が決まる時代、最下層の人間であるコウは仕事に失敗して警察に追い詰められているところをイヴという少女たちによって助けられる。イヴとその集団のボスであるイザナギたちはこの格差社会を覆そうと計画していて…。
久しぶりの神永先生。正直、八雲を三巻ぐらいまで読んでストップしてます。今更追いかけるのもな~と思ってたので新シリーズに手を出してみました。まだ序章といった感じでこれから面白くなりそうです。どこかで聞いたことあるような設定だなと思いつつもさすが神永先生なだけあって重厚な世界観がよくかけていました。
コウはDNAシステムを作った草薙の子供ってことでOK?同じ人間なのにDNAランクが下なだけで扱いがひどいことを可哀想だと思いつつもなにもしなかった自分に嫌気がさすミラ。いつかコウと一緒に反政府って立場をとってそう。最後の展開で二人の関係がどれぐらい縮まるのかも気になる。イザナギに忠実なイヴが可愛い。

いなくなれ、群青

いなくなれ、群青 (新潮文庫)

いなくなれ、群青 (新潮文庫)

捨てられた人々の島、階段島。記憶の一部をなくしていることから何故階段島にいるのか、を知る者はこの島を作った魔女のみ。階段島で平和に暮らしていた七草はかつての友人である真辺由宇に再会してしまう…。
自分のなくしたものを見つければ階段島を出ることができる、そのルールは階段島のからくりの根本である。七草が魔女に正解をいったときになるほどな~と思いました。魔女の正体はトクメ先生かと思いきや結局は謎のまま。その方がミステリアスでこの物語の雰囲気にはあってますね。
自分の力で光輝く星であるピストルスター。七草にとって真辺は正にそんな存在で、離れててもいいからどこか遠くで輝いている真辺をそっと見守る。それが七草のスタンスだった。暗くていつも物事を悪い方向へと考えてしまう自分を卑下して、真辺の傍にいなくてもいいと思いながらも心の中で傍にいることを望んでしまった自分がいる。そして切り捨ててしまった自分がいる。それに気付いてやっと一歩踏み出したのが最後のシーンなのかもしれない。
爽やかな読み口で、ハッピーエンドで良かったです。